2016年5月 の 現地報告! です

【マルティンさん家の雰囲気】

※写真はありません

 

我が家の守護聖人、聖マルティン。祝日は11月3日。

それにちなんで、毎月3日にみんなで集まって聖マルティンさんのことを思い起こす。

昭子さんはいつも祈りとともにありますが、みんながそうではない。

毎年月ごとに担当があって、その人たちがアイディアを出して3日に何をするかを決める。

ある人はマルティンさんの話をし、ある人はゲームをする。

そして今月の担当者はある質問を準備していた。こどもたちとコンビを組んで答えをだす。

日本人にはない感覚で、おもしろいので紹介する。質問は全部で16個。一応すべてに答えがある。

質問

一番美しい日はいつ?

物事のうちで、何がより起こりやすい?

どんな物事がより障壁となる?

間違いのうちで、最も大きい間違いは何?

全ての悪い物事の根源は何?

より美しい気晴らしは何?

より良い教師は誰?

幸福感を感じるのにより働くのは何?

より悪い心の状態は何?

より美しい贈り物は何?

より自分の感受性に訴えるものは何・

より自分を心地よくさせるものは何?

より自分を満足させるものは何?

より自分を強めるものは何?

より必要とされている人は誰?

より美しいものは何?

 

答えの選択肢

A.

放置すること B.ゆるし C.今日 D.家庭 E.間違うこと F.信仰 G.愛情 H.希望 I.仕事 J.親 

K.責任感 L.不機嫌 M.こども N.利己主義 O.他者の役にたつこと P.恐れ

 

スペイン語のニュアンスが日本語にうまく訳せていないし、

質問がアバウト過ぎて質問に対して5・6個質問を返したくなったりしたのですが、

これらの質問に対してのみんなの答えがある程度一致していました。みんなで出したCAPEDISの答えは次の通り。

 

今日 ②間違うこと ③恐れ ④放置すること ⑤利己主義 ⑥仕事 ⑦こども ⑧愛情 ⑨不機嫌

⑩ゆるし ⑪家庭 ⑫希望 ⑬愛情 ⑭信仰 ⑮親 ⑯愛情

 

2回同じものあげてもよかったのね、となった人もいたかもしれませんね。へへ。

おもしろいな、と思ったのは、⑥の質問に仕事と答えが来るところ。

「気晴らし~!?」日本人には絶対にない感覚のような気がする。

そして納得もした。

ボリビアについてからずっとここの人たちの働き方、仕事への姿勢にあらゆる疑問が泉のように湧き、

かつ火山のように怒ってきたわけですが、気晴らしだったらそうなるな。はぁ…。


【ロサリオとサラ】

ドイツからのボランティア、サラがCAPEDISに来てから3ヵ月が経ちます。

私たちの要望と彼女の希望が一致してロサリオの担当になってもらい、いつも一緒に活動しています。

ロサリオは弱視・斜視。

下肢の骨が歪曲していて、歩行はできるが困難。知的障害もあり、3歳程度。

性質はとっても明るいノリノリな性格だと思う。

踊るのが大好きで、知っている音楽が聞こえるとすぐ体が踊りだす。歌う。人に話しかけるのも大好き。

スキンシップも大好き。抱き着いたら「もう一生離れない」という雰囲気で粘着質になる。

「放してくれ」と言ってもかなりの強い力で締め上げる(本人にそのつもりはない。)

結局こちらも力づくで引き離すことになって、せっかくの愛情いっぱいの雰囲気も台無し。

そして意地っ張り。

「やりたくないことは、しない!」

気の強い部分もあって、シエロからしかけられたケンカは全て受けてたち、爪を顔やら腕やらに食い込ませて勝利。いつも勝つ。シエロはいつも負けるのに、しばらくするとまた挑む。なんやろね。

そんなロサリオは人と関わるのが好きなのに、放っておかれたらそのままぼんやりと過ごすこともできる。

言ってみれば「遊んでくれ~」と騒ぐこともないし、動き回らないし、

長い時間座ってぼんやりしていも鬱憤がたまることもない。

本来の性格は明るいのに、大人しいのだ。相手にされるとうれしいが、されなくても平気。そんな感じなのだ。

それで、人が少ないと基本的な支援、例えば食事や排せつ、入浴、

歯磨きといったことやリハビリでは関わるのだが、

教育やあそびやコミュンイケーションを伸ばすところでは放置状態にあった。

そして今回サラが彼女に興味をもってくれたことはとても大きい。サラは専門でなくて、学生。

ボランティアで障害をもつこどもと関わった経験はあるが、専門的な知識はない。

サラにとっても学ぶことがいっぱい。

それでも彼女のもつ真面目さや若さ、開放的な性格で向き合っているように見受けられる。

サラは誰とでもいろいろなことを話す。

それが幸いしてロサリオが随分と話すようになっている。

はじめはオウムみたいに人の言ったことを繰り返すのだが、何度も応え方を教え続けると会話になってくる。

自分の意思や希望を伝えられたら、どんなにいいだろうと思う。

ロサリオはもう24歳。彼女のいいところをたくさん引き出してほしい。


【歩こう ロサリア】

※写真左:外の公園で歩く練習をして、帰ってきたとこ。

※写真中:ぐったりしてる・・・がんばったがんばった!

※写真右:大人びた表情・・・16歳だからなぁ・・・

 

先月の報告で平塚さんの働きが大きく、17歩一人で歩いたロサリアですが、その後の経過報告。

今回は写真もあります。

理学療法士はこれまでのように歩行訓練を続けていますが、その他にもう一人担当を決めて、

朝身支度を終えたら2階から食堂のある1階へ歩いて、椅子に座る、という毎日の習慣づけと、

毎日おやつのあとの歩行訓練を始めました。

記憶にないくらい自然な形で歩けるようになっていた私ですから、

それがどんなにさまざまな要素が組み合わさって成り立っているかということを彼女をみながら学ぶ。

筋力、バランス、踏み込み方などなど。

ロサリアはほんのちょっとの窪みや盛り上がりにバランスを崩して倒れる。足の指の使い方も自然な形では入らない。

リハビリの視点からすると歩行までにはまだまだ足りないことばかりらしい。だ

から、ひたすらに彼女の「歩きたい!」という気持ちで歩いている。

それは想像以上に恐ろしかったりするだろうと思う。

体が思うように動かず、滑らかな筋力や骨の動きができない中、

大きく左右前後にぶれながらひどいバランスの悪さで前に進むのだ。

だから、ロサリアは20歩も支えありで歩くととっても疲れてしまう。

歩行訓練のあとは頭をがっくりさせて眠りこける。それでもまた歩こうとする。

それがどんなことに繋がるかなんて考えてない。

ただ、歩くとまわりの反応がいいとか力づくでも立たされるとかそういうことが彼女を歩く方へ向かわせるのだ。

歩けたら、好きなところにいける。歩けたら、おでかけも増える。歩けたら、遊びが広がる。歩けたら…。

希望をもって続けていきたい。ロサリア、君にはできる!


【訓練いろいろ】

※写真左:切るのは得意なシエロ

※写真左中:蝶々の形に・・

※写真中:手で数字を表す

※写真中右:「鼻はどれ?ホセ」

※写真右:「ナリース」と何度も発音練習

 

シエロはカード作りをしている。

得意のハサミで色紙を丸く切って、蝶々の模様にする。

切るのは得意だけど、“好き勝手に”ではなく“蝶々になるように”配置。

これがシエロには難しく、逐一示さなければならない。

ホスエは算数が苦手。苦手というより私には不可能のように見える。

もう5年以上は算数というより数、1~10までの数を教えているが、つながらない。忘れてしまうのだ。

せっかく本人も苦労して学んでいるのだから、生活の中で活かしたい。

が、まだまだ努力は続く…写真は喋れないホスエが数字を手で示せるようになるために手の形の見本。

ホセは言語障害がある。だから基本的に使うことばは「ま」。

この「ま」を語気の強弱と回数で使い分けて“怒っている”“

人の名前を呼んでいる”“歌う”など器用に人とコミュニケーションを取る。

それでいいのだが、“ことばを使わない = 理解ができない → 教えること自体無駄”とはならないから、

いつどの時点で、どの方法で彼のピントが合って、頭に入るとかいう可能性自体は捨ててはいけない。

写真は身体の図を示してそれがホセの体のどこにあるのか本人が指し示している。これは彼はできる。

して忘れない。で、その語「ナリース(鼻)」と発音させている。

ちなみにきちんと覚えている単語・名称もある。

「シエロ」「アウト(車)」「バーモス(行こう!)」


【むっちゃ働いた!】

※写真左:コンビを組んで「詰める人」と「運ぶ人」。シエロは「詰める人」。

※写真中左:ホスエは「運ぶ人」

※写真中:マリア・ルースは「運ぶ人」

※写真中右:ロサリアは「運ぶ人」

※写真右:ロサリオは「詰める人」

 

今年もサンタクルースの日本人の方からお米ともみ殻を大量にいただいた。

米はCAPEDISの1年分の量以上いただく。とってもありがたい。もみ殻は畑で家畜たちの寝床に使う。

それでこの日はみんなでもみ殻を豚の小屋に運ぶ作業。

荷自体は軽いのだが、量が半端じゃなく、

7名の職員とこどもたちで1時間半運び続けてもなお積み上げられたもみ殻の山のほんの一部が終わっただけ。

職員はとくにくたくたでした。

でもこの作業、泥まみれになるわけでもなく、案外と柔らかくて持ちやすく、

軽いのでみんながそれぞれの働きをして仕事を進めることができる、とてもいい仕事でした。

 


【馬に乗ったよ】

写真左:ホスエ大喜び!

写真左中:バランス感覚抜群のロサリオ

写真中:鉄棒もアスレチックもあるから、遊べる。シエロ、体が重くてぶら下がれない、の図。

写真右中:広いから歩く練習も出来るし、

写真右:コケても痛くないよ!

 

乗馬療法は2013年までは年間の取り組みの中に入っていましたが、

CAPEDIS外来部閉鎖のときに運転手がいなくなったため、でかけられなくなったのです。

それが、2年ぶりの再開。こどもたちが喜ぶ、喜ぶ。

特にロサリオは満面の笑みでしかも2年経ったのに乗る感覚を覚えていて、上手に座っておりました。

あちらには広い草地があって、鉄棒やアスレチックがあるので体を使って遊ぶのに最適。

リハビリも然ることながら、気晴らしにも持って来いです。


【障碍者デモ、その後・・】

写真右:穏やかなマリア・ルースが持っている文字は、

    ”感受性の薄いやつら、私の身になってみろ。

    私を(珍しそうに)見はしても、私のことをちゃんとみてない。ばかやろう!”

    この文字におずおずとしてしまう、マリルであった。

 

ラパスでのデモは続いていますが、変わらず反応なし。

そこで、コチャバンバに残っている障がい者たちもそれぞれ立ち上がりだした。

ラパスのデモを後押しする形で、コチャバンバ市内で再度ストライキ。訴える内容は同様に生活保障。

私たちもみんなでかけて、デモとストライキをしてきました。

まずは大声で要望を人々に伝えながら街中を練り歩く。そして官庁まで行って、政府に訴える。

そのあと町の中心道路に行って車いすと人で道を封鎖して交通止め。

大型トラックが車いすがあるのに無理やり通行しようとして一時騒然となる。

私たちが参加したのはたったの4時間くらいのこと。

この闘いを続けている人たちの強く、そして必死な思いを肌で感じました。


【マリア・ルース、電動車椅子デビュー!】

4月に昭子さんと一緒に無事に帰国したマリア・ルース。

電動車いすをいただいて、今月から練習を始めました。これははじめての試乗のとき。

恐々、でも嬉々とした表情。

彼女のコメントは「操作はまだとても難しいけれど、すごく自由を感じる。」というもの。

どこに行くにも何をするにも初めに“お願いする”から入る彼女。

どんなに丁寧にお願いしても無造作に対応されることもあるし、不満を態度であらわされることもある。

どれだけでも気を遣って来た彼女だから、電動車いすが彼女に与える自由はとても大きいものだろう。

そのあと練習を重ねて、今週やっと2階から1階に降りれるようになりました。

これで、朝から電動車いすを使えるわけです。よかったね、マリルッ。


【新メンバー紹介】

写真左:イラリオン

 

5月10日に病院から移送されてきた彼、イラリオン。

事情を聴くと、2015年2月、約1年3ヵ月前までチャパレー県に一人身で住んでいて、

物を収納するために屋根裏(?)に登り、そこからバランスを崩して落下。

背中から落ちたようで、背中の真ん中あたりに手術あとがある。

一人暮らし、そして田舎であるため、隣家が遠いのか、誰かが物音を聞いて駆けつけることはできなかった。

翌日知り合いが訪ねてきてようやく発見。それまでの時間はどんな思いだったか。

そして村の病院に運ばれたが処置できず、コチャバンバに移送された。

家族はいるが、10年以上もやりとりがなく連絡先を知らず、行き先がない。

手術後同じ姿勢のまま過ごしたため、7つも褥瘡ができてCAPEDISにやってきたのである。

本人はいたって落ち着いていて、どこか飄々としている。

昨年まで健康体で、動けていたのに体が自分でコントロールできなくなったり、

下肢の感覚がなくなったり、排泄のためストマをつけることになったり、

褥瘡を抱えたりと本人からしたら次から次に悪いことが起こっているし、

通常ならば落ち込むとか愚痴をいうとかあると思うのだが、

“何も不安はない”“考えても仕方のないこと”なんて言っているのだ。

一見、達見した人なのかと思いきや、ではこの先はどう考えているのかという問いには“知らない”と答える。

“死んでもいいし、生きてもいいし”といった感じを受けた。

だからその心の状態はかなり深いところで麻痺しているというか、

心理士がしっかりと働いていかねばならない人ではないかと思う。

この事故のショックだけではなくて、

幼い頃からの家族との関係が本人の性格や思考に大きく影響していると思われるので、

色んな意味でこのCAPEDISで祈りとともに癒されて欲しい。